1-2-9:ステップ1「Research」⑥ VRIO分析

VRIO分析は、マーケティング戦略において市場や競争環境を評価するフレームワークで、価値、希少性、模倣困難性、組織の4要素から成ります。
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VRIO分析とは

VRIO分析は、企業のリソースや能力が競争優位を築くために、どの程度有効であるかを評価するフレームワークです。以下の4つの要素から構成され、これらの基準を満たすリソースは、持続的な競争優位を築く基盤となります。

  • V(Value/価値):企業や製品が提案する価値を分析します。顧客が自社プロダクト(製品やサービス)に対して一定の価値を見いだすなら、その源泉となるリソースや能力は競争に役立ち、利益を得る助けになります。

  • R(Rarity/希少性):価値を生み出すリソースや能力が競合他社にはほとんど存在せず、独自性があるかを確認します。市場において希少なら、それを生かして差別化できます。

  • I(Imitability/模倣困難性):他社が同じリソースや能力を模倣することが難しいかを評価します。模倣にかかるコストや時間が大きければ、競争優位があるといえます。

  • O(Organization/組織):価値の源泉となり、希少で模倣困難なリソースや能力を、企業が十分に活用できる組織体制やプロセスが整っているかを確認します。

事例1.自動車業界のハイブリッド技術のVRIO分析

  • V(Value/価値):燃費性能の向上と環境負荷の軽減を実現し、環境意識の高い顧客にとって重要な価値を提供します。競合他社と比較して、コストパフォーマンスの高いハイブリッド車を提供することで、顧客満足度を向上させます。

  • R(Rarity/希少性):初期の段階でハイブリッド技術を市場に導入すれば、競合よりも早く普及を進めることができます。システムが特許により保護されることで、競合他社には実現できない独自性があるといえます。

  • I(Imitability/模倣困難性):ハイブリッド技術は膨大な研究開発費と製造ノウハウによって支えられており、他社が模倣するには多大なコストと時間が必要です。特許戦略も模倣困難性を高め、競争優位性を維持します。

  • O(Organization/組織):生産工程の効率化と、ハイブリッド技術を活用した車両開発プロセスを整備し、競争優位性を最大限に活用します。販売網やブランド戦略を通じて、ハイブリッド車を市場で広く受け入れられるように展開します。

事例2.スマートフォンのOSとアプリ販売ストアのVRIO分析

  • V(Value/価値):スマートフォンのOSとそれに対応したアプリの販売ストアが強固なエコシステムを形成すると、ユーザーにシームレスで直感的な体験を提供します。関連するOSを有する、PCやスマートウォッチなど異なるデバイス間のスムーズな連携は、ユーザーが他の製品に乗り換えにくくする大きな価値を生み出します。

  • R(Rarity/希少性):独自のOSとアプリ販売ストアによってエコシステムが支えられることで、競合他社が展開するOSやストアとは一線を画しています。特にアプリ販売ストアにおいて、品質管理とデザイン基準を徹底することは、他社には真似できない差別化要素になっています。

  • I(Imitability/模倣困難性):このエコシステムは、長年の技術開発と顧客ロイヤルティの構築によって成立しているため、他社が模倣するには膨大な時間とコストがかかります。特に、OSのセキュリティやプライバシー保護の仕組みは、模倣が困難な競争優位性になっています。

  • O(Organization/組織):製品設計から販売、アフターサービスまで、エコシステムを効果的に活用する組織体制が整備されています。開発ツールの提供や審査プロセスの透明性の開示といった開発者向けのサポートや、きめ細かな顧客サポートも、エコシステムを強化する要素となっています。

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《西口一希》

実務に使えるマーケティングプロセス