
デジタル登場前後で手法やノウハウが統合されていない
マーケティングは、コトラー教授の『マーケティングマネジメント(Marketing Management:Analysis, Planning, and Control, Prentice)』の影響のもとに発展しましたが、そもそも会計財務、数学、物理、化学といった分野と違って普遍的な法則が存在しないので、コトラー教授以外にも多くの研究者、実務家、広告代理店などが、様々な理論やフレームワークを提案してきました。
1970年代から1990年代までのコミュニケーションは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオといった4マスメディア媒体を活用した一律のコミュニケーション(マスコミュニケーション)が主体で、販売チャネルは小売店舗、卸流通といった物理的な流通と営業活動が主な対象でした。これらを、マスマーケティングと呼んでいます。
1990年以降にインターネットが登場し、パソコンが仕事環境から個人使用に広がり、インターネット上に多種多様なメディアと販売チャネル(EC)が誕生し、Yahoo! などの情報取得のポータルサイトやGoogleなどの検索サービスが登場しました。さらに2000年代後半から、スマートフォンが個人デバイスとして世界中で一気に広がることで、インターネット上のメディアと販売チャネルと流通(EC)と様々なサービスが急増し、マスメディアに変わる情報取得の手段として急激に浸透しました。また、スマートフォンを通じて時間も場所も選ばない個々人からの情報発信が歴史上で初めて可能になり、マーケティングの環境が劇的に変化しています。
この急激な変化の中で、2010年代以降は、スマートフォン使用者向けに、デジタル技術を駆使したマーケティング手法やノウハウが急増しました。この変化は、2020年代に入っても日進月歩で続いており、AI技術の一般化でさらに加速しつつあります。

こうした流れの中、2000年代まで発展してきたマスメディアや物理的な販売チャネルや流通を前提にしたマーケティングは、インターネット、デジタル、スマートフォンを活用したマーケティング手法やノウハウと統合されていません。それぞれの理論やノウハウは、それぞれの専門分野として分断されて実務活用されている状態です。
このようにマーケティングは70年以上の歴史を経て、デジタル、インターネット、スマートフォンによる劇的な変化に対していまだ統合されないまま、110種以上の「〇〇〇マーケティング」として分化、専門化されています。そこには普遍的なルールや法則が存在しないため、実務における活用方法も千差万別になっています。

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