
多種多様なマーケティング手法が存在している
ビジネスの世界で、財務会計などの分野では明確なルールや法則に基づいて同じ理解のもとで遂行されますが、マーケティングには明確なルールや法則がありません。定義も曖昧で、かつ専門の学者や実務者の間でも一貫した解釈が存在しません。2024年時点で、インターネット上で確認できるだけでも100種類を超える多種多様な「〇〇〇マーケティング」があり、新たに学習し実務で活用するにしても、どこから手をつけるべきかで迷うことが多い分野です。(参考:112種類のマーケティング)
ここでは、まず多種多様な「〇〇〇マーケティング」に至った歴史を簡単に振り返り、どのような「〇〇〇マーケティング」でも業務として基本となる「マーケティングプロセス」に関して数回に分けて解説します。
書籍からひもとくマーケティングの歴史
マーケティングが最初に始まった時期については、一致した意見がありません。古代に見られると主張する人もいますし、17 世紀前後にヨーロッパでの消費者文化の隆盛に伴って出現したと主張する研究者もいます。
学問としてのマーケティングは、経営学や経済学の一分野として扱われ、1902年にミシガン大学やイリノイ大学でマーケティングコースが開校、1904年から1905年にペンシルベニア大学で「製品のマーケティング」のコースが開始されています。
その後、様々な論文や書物が1940年代から出版されました。主な書籍としては、1947年のエドワード・ダビー氏とデイビッド・レブザン氏による『Marketing』、1956年のヘリー・ハンセン氏の『Marketing :Text, Cases, and Readings』。1957年にはジョン・ハワード氏の『Marketing Management :Analysis and Decision』が出版され、マーケティングは売上に結びつかなければ成功しないと主張しました。
1958年のユージン・ケリー氏とウィリアム・レイザー氏による『Managerial Marketing:Perspectives and Viewpoints』では、マーケティング・ミックスという言葉が初めて使われています。1960年、ジェローム・マッカーシー氏が出版した『Basic Marketing:A Managerial Approach』でもマーケティングミックスに触れ、それはProduct(製品)、Place(場所チャネルも含む)、Price(価格)、Promotion(促進)であると提示し、マーケティングミックス=4Pという理解がここから広まりました。
この、マーケティングミックスとしての4Pを含む、ここまでの様々なマーケティングの議論や提唱された概念をまとめる形で、1967年にフィリップ・コトラー氏(ノースウェスタン大学経営大学院ケロッグスクール教授)の『マーケティングマネジメント(Marketing Management:Analysis, Planning, and Control, Prentice)』が出版されました。本書は世界的なベストセラーとなり、その後のマーケティングの素地を固めました。この本で、マーケティングと4Pという言葉が世界に大きく広められました。
この本は、のちに世界中のビジネススクールでテキストとして活用され、長年にわたり多くの実務家や研究者に多大な影響を与えています。改版を重ね、最新の2022年の原書16版では842ページにも及んでいます。様々な関連トピックを解説し、BtoCだけでなくBtoB分野まで網羅しています。

そして1980年にはマイケル・ポーター氏の『競争の戦略』が出版され、製品差別化とコスト・リーダーの同時追求の可能性が説かれました。同年、ポーター氏は続けて『競争優位の戦略』も上梓し、これら2冊はマーケティングの戦略論に大きく影響を与えました。
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