小売企業の本当の課題と、顧客体験の向上につながる売り場のつくり方
「Marketing Native Fes 2024 Spring」(マーケティング・ネイティブ・フェス)で行われた対談記事。P&G時代にショッパー・マーケティングを担当した経験を持ち、ロクシタンジャポンで代表取締役を務めた西口と、西友とイトーヨーカ堂、ドミノ・ピザ ジャパンのマーケティングを担当し、リテールマーケティングのプロである富永朋信さんが対談しました。
小売業界におけるマーケティングの課題をテーマに、西口と富永朋信さんの初めての対談記事です。
西口は、P&G時代に日本と韓国にショッパーマーケティングを導入した経験を踏まえ、メーカーやBtoBに比べて、小売業界が特異な特徴を持つことを説明しました。
その一つが「WHO(顧客)」と「WHAT(商品)」の組み合わせが非常に多岐に渡ることです。取り扱う商品カテゴリーが何千、何万、何十万と非常に幅広く、その中でどの商品をどの顧客層にターゲットするかのパターンが多岐にわたります。この複雑な組み合わせの中で、特定の商品に注力することで短期、中長期の売上と利益が大きく変動するため、小売業界のマーケティングは他の業界と異なる戦略が求められます。
さらに、小売業では、店舗内での商品陳列や接客サービスの質が顧客の購買行動に直接的な影響を与えるため、他の業界以上に現場でのオペレーションがビジネスの成功に直結し、商品をどのように棚に並べ、どのように顧客にアピールするかという「売り場作り」が、売上に与える影響は非常に大きいと強調しました。
富永さんは、小売業のマーケティングを語る上で「プライスライン」「インストアコミュニケーション」「ブランド」の3つのキーワードを挙げました。プライスラインでは、単一の商品ではなく、選択肢全体としての売り場作りが重要だと述べ、特に価格帯ごとに最適な商品を配置することが求められると指摘しました。一方で、メーカーと小売店が異なる視点で戦略を立てることが多く、これが両者間の摩擦を生む要因になっていると説明しました。
また、インストアコミュニケーションについては、多くの人が関与するため、売り場におけるメッセージが統一されにくく、結果として顧客にとって分かりづらい売り場になってしまうことが問題であると述べました。
さらに、富永さんはブランド構築の難しさにも言及しました。多くの小売店が広範な顧客層をターゲットにしているため、ブランド戦略の焦点がぼやけがちであり、ペルソナ設定やカスタマージャーニーのような一般的なマーケティングフレームワークがうまく機能しないことが多いと述べました。
西口は、これらの課題に加えて、データの活用不足も小売業界における大きな問題だと指摘しました。P&Gとウォルマートが1980年代から協業し、データを用いた売り場の最適化を行っていたのに対し、日本の小売企業ではまだデータ分析の積み上げが十分ではないと感じていると言います。特に、購買頻度や継続性といったデータの分析が不十分であり、短期的な結果にばかり注目する傾向が強いため、利益率が低下してしまうケースも多いと指摘しました。
具体的なデータも使っての、小売業界のマーケティングに関する珍しい対談でもあるので、是非、一読いただければと思います。
小売企業の本当の課題と、顧客体験の向上につながる売り場のつくり方
「Marketing Native Fes 2024 Spring」(マーケティング・ネイティブ・フェス)で行われた対談記事。P&G時代にショッパー・マーケティングを担当した経験を持ち、ロクシタンジャポンで代表取締役を務めた西口と、西友とイトーヨーカ堂、ドミノ・ピザ ジャパンのマーケティングを担当し、リテールマーケティングのプロである富永朋信さんが対談しました。
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