データの定義をしっかり確認しないと間違った解釈が広まる問題について、EVブームの文脈で紹介します。2024年9月現在では、EVへの熱狂は減ってきており、EVメーカーの売上が減速する中で、メディアでも懐疑的な論調が増えてきました。しかし、この傾向は、データの定義を見ていれば、かなり以前から見えていたのではないかという話です。
まず、メディアでは、参照されることの多いJDPowerのデータを使って「EV売上」として報道されることが多いですが、その数字は、EV=BEV+PHEVです。
テスラみたいな完全バッテリー駆動のEVはBEV(Battery Electric Vehicle)と呼ばれます。BEVは電気を充電してモーターで走ります。一方で、PHEVは、Plug-in Hybrid Electric Vehicleの略で、日本語でいうとプラグインハイブリッド車です。動力源としてガソリンエンジンと電気モーターの2つを搭載し、専用コンセントから充電するタイプと自動的に充電されるタイプがありますが、データ上は同じカテゴリーとして合算されています。
つまり、EVという数字にはトヨタのハイブリッドも含まれているのです。なので、JDPowerの合算のEV売上数字を使って「これからはEVの時代だ!」「日本のメーカーは出遅れた!」「中国のEVが世界を席巻する!」みたいな主張があっても、そもそも「それってBEVですか? PHEVですか?」と問うべきなのです。
誰でも見られる、JDPowerの3月時点でのデータをBEVとPHEVに分けると(グラフにしてみました)、やはり、2023年に向かってPHEVが伸びてます。
そして、色んなメーカーがBEV販売に力を入れていた2023までに対して、すでに大手の多くは優先順位は下げており、さらに、政府の補助が少なくなれば、PHEVは伸びても、BEVの勢いは戻らない、と予測できるのです。数字の定義をしっかり理解して読み解けば明らかなのです。
トヨタさんは、当然、この傾向は以前から理解されているので、ますますPHEVに注力していく姿勢を明確にされていますね。世の中にはたくさんの無料で参照できるデータがあふれ、さまざまな分析が可能になっていますが、参照するデータの定義そのものや、そのデータをどのように取得したのかまで、しっかり理解したうえで活用したいです。
素晴らしいデータ集をご覧いただければと思います。
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