「パーパス偏重」の次に来るもの カンヌで見えた世界のマーケ新潮流(日経クロストレンド)

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各メディアなどに掲載された記事の中で、西口一希が気になった記事をコメント付きで紹介するコーナーです。今回はカンヌライオンズ2024について解説した日経クロストレンドの記事を紹介します。
「パーパス偏重」の次に来るもの カンヌで見えた世界のマーケ新潮流(日経クロストレンド)
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「パーパス偏重」の次に来るもの カンヌで見えた世界のマーケ新潮流 

世界のマーケ新潮流~カンヌライオンズ2024超速リポ 第1回/全13回 ー カンヌはアワードに注目が集まるが、現地カンヌでは、200以上の講演やワークショップなどのセミナーが開催されている。その中から、日経クロストレンドおよび日経デザインの読者に有益と思われるものを厳選して分析し、世界のマーケティングが向かう「先」を探る特集。

この記事は、日経クロストレンドの2024年7月の有料会員の記事ランキング1位の記事です。

カンヌと言えば広告賞としてアワードが有名ですが、実は、現地では、マクドナルドやP&G、ユニリーバといったグローバル企業のCMOの公演も含めて、200以上の講演やワークショップなどのセミナーが開催されています。この記事は、全13回の特集の第1回で、日経クロストレンドおよび日経デザインの読者に有益と思われるものを厳選して分析し、世界のマーケティングが向かう「先」を探るために記事化されています。

現地にいても、全てを網羅的に見ることはできないので、この特集は、個人的には非常にありがたい特集で、様々な発見があります。

この第1回では、2024年のカンヌライオンズでは、「ユーモア」が重要なテーマとして浮上し、消費者との深い絆を築くためには、ユーモアを活用することが有効であるとされ、アワードでは全30部門の半数近くで、「ユーモアの活用」というサブカテゴリーが新設されたそうです。

その背景として、ここ最近の受賞事例が、パーパス(企業およびブランドの存在理由)や社会課題解決などを重視したシリアスな施策が中心になりすぎていることに対する危機感なのではないかと推察し、実際に今回のカンヌライオンズでは、パーパスという言葉を聞くことはほとんどなかったそうです。この推察には個人的にも強く納得します。

そもそも「パーパス」ブームを振り返ると、パーパスという言葉は、2010年代から、企業の社会的責任(CSR)や持続可能性への関心の高まりに伴ってビジネスにとって重要だと強調されるようになりました。

たとえば、経営思想家のサイモン・シネックは、彼の著書「Start With Why」で、成功する企業は「なぜ(Why)」を明確にし、その目的に基づいた行動をすることが重要だと主張しました。また、アメリカの経営コンサルタントであるラリー・ファインバーグは、企業が持続的に成長するためには、明確なパーパスが不可欠だと強調しています。

このような流れで経営者の間で「パーパス」は流行し、自社のパーパスを定義し様々なパーパス活動が生まれました。CSR的な活動にとどまらず、お客様向けの広告やPRでもパーパスは訴求され、カンヌでもパーパスがブームだったわけです。

個人的には、全ての企業にとって「パーパス」は重要ですが、それは、そもそも、ビジョン、ミッション、バリュー、社是、価値観などの別の言葉の中ですでに定義されていて、単に、「パーパス」として明文化してないだけだと感じていました。

また、「パーパス」なるものは、企業の内部指針であり、お客様に向けた、企業の物作り、サービス作り、それらの提供と組織運営において実現することであり、わざわざ、顧客やお客様向けに広告・PRする必要はあまりないのではと考えていました。

一方で、今回、カンヌで中心だったとされる「ユーモア」は、広告やPRの手段として、100年以上前から有効で、突然、有効になった訳ではないです。毎年、多くの広告やPRではユーモアを有効に使った好事例は、たくさんあります。つまり、今回の「ユーモア」が話題になったのは、当たり前の話を、あえて押し出したように思えます。

また、「瞬間(moment)」という概念も重要視されていたようで、P&GのCEOであるMarc Pritchard氏は、「日常のささいな瞬間に創造性が眠っている」と語り、マーケティング活動においては、消費者の日常に寄り添ったアプローチが鍵となることを強調しました。これも、マーケティングや広告やPRにとって、常に有効なのです。

今回、これらが、改めてカンヌで強調されたことを考えると、ともするとお客様とは関係のない内向きな流行から離れて、広告やコミュニケーションは、お客様にとって重要なことに、原点回帰しようというメッセージなのかと思います。個人的には、カンヌはエンターテイメントとして楽しいのですが、年々、実際のリアルなお客様から離れていくような印象を持っていましたが、今期、事例として取り上げられている広告やキャンペーンは、お客様にとっても意味のあるものが多いように感じます。

素晴らしい記事をお読みいただければと思います。

「パーパス偏重」の次に来るもの カンヌで見えた世界のマーケ新潮流 

世界のマーケ新潮流~カンヌライオンズ2024超速リポ 第1回/全13回 ー カンヌはアワードに注目が集まるが、現地カンヌでは、200以上の講演やワークショップなどのセミナーが開催されている。その中から、日経クロストレンドおよび日経デザインの読者に有益と思われるものを厳選して分析し、世界のマーケティングが向かう「先」を探る特集。

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《西口一希》

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