
スマートニュース「クーポンチャンネル」の顧客戦略
顧客戦略(WHO&WHAT)とは、経営が目指すべき投資戦略といえます。価値を生み出す顧客戦略を明確にし、組織内で部門横断で共有することで、組織全体の活動に一貫性と効率性をもたらす「顧客起点の経営」の実装が可能になります。
ニュースアプリ「スマートニュース」の成長につながった顧客戦略の一部を紹介すると、2018年には以下のような便益と独自性での顧客戦略を実行しました。
スマートニュースがTAM顧客数と考えていたマーケットは、「スマートフォンを持つ男女10‐60代」の8千万人強でした。その中で、アプリユーザーである顧客の拡大のために実行した顧客戦略は、「外食する社会人・学生・主婦」(WHO)に対して、「マクドナルドやガストのクーポンでランチがお得になる」(WHAT)であり、その便益は「その日に使えるクーポンでランチが安くなる」こと、独自性は「一つのアプリに大手の最新クーポンがまとまっている」ことでした。その後、数年内に様々なアプリが同様のクーポンを提供し始めたため、独自性は弱くなりましたが、当時はスマートニュースだけの独自性が高い価値を生み出しました。

顧客戦略とは ― 誰に何を提供すれば「価値」が生じるのか
提案内容を一般の方に分かりやすくコンセプトに落とし込み、量的アンケート調査を行ったところ、この便益と独自性に価値を見いだしてくれる顧客がTAM顧客数8千万人強の半数ほどいることが分かりました。そこでテレビCMを投入して大々的に訴求したところ、外食をする方に強い価値を生んだ戦略になりました。
しかし、外食を好まない方には、何の価値も生み出しませんでした。外食をしないなら、外食の機会に役立つ割引クーポンに意味はないからです。つまり、プロダクトが提案する便益と独自性に価値があるのではなく、その便益と独自性の提案に対して“自分ごと”として価値を見いだす顧客との組み合わせ自体が戦略なのです。このように、多くの顧客に価値を見いだしていただける便益と独自性の組み合わせをどれだけ多く洞察し、実現するかで事業の成長は決まります。

単純な話に聞こえるかもしれませんが、顧客戦略を構築することで、スマートニュースに限らず、これまで関わったビジネスにおいて継続的な事業成長を達成することができました。一方で、顧客戦略が曖昧なままのビジネスでは、恥ずかしながら、多くの失敗を招いてしまいました。
誰に、何を提案するのかという「顧客戦略(WHO&WHAT)」をしっかり構築した上で施策(HOW)を展開したビジネスは、継続的な事業成長を実現できる可能性が高いです。好調なビジネスを第三者的に分析しても、そのように考えられるケースが多く散見されます。裏を返すと、顧客戦略が曖昧なままのビジネスは、失敗の危険性をはらんでいます。顧客戦略を構築せずに施策を展開した結果、期待する効果が得られず、投資の無駄遣いになります。
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