2-3-22:便益と独自性を備えてこそ価値が生まれる

顧客起点マーケティング 経営とマーケティングの理解
顧客に価値を感じていただくには、便益と独自性の両方を強化し、的確に伝えることが重要です。これにより、価格競争や顧客離れを防ぎ、持続的な成長につながります。
2-3-22:便益と独自性を備えてこそ価値が生まれる
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プロダクトが提供するものは便益と独自性

ここから、顧客起点の経営改革の軸となる顧客戦略(WHO&WHAT)を解説します。

顧客戦略は、自社プロダクトが提供する便益と独自性に、顧客が「価値」を見いだす組み合わせです。企業の視点で「自社プロダクトは便益と独自性を提供している」と考えていても、顧客がそれを自分にとっての便益として捉えず、他の競合や代替手段に対して独自性を見いださなければ、その顧客と自社プロダクトの組み合わせに「価値」は成立しません。従って、利益を生み出す戦略にはなり得ません。残念ながら、それは典型的なプロダクト起点の思い込みであり、顧客への片思いでしかないのです。

顧客戦略の目的は、高い投資対効果で、5segs内の顧客を自社プロダクトの購入と継続購入に導き、利益性を継続的に高めることです。顧客戦略を正確に理解するために、便益と独自性の意味を明確にしておきます。

便益とは、「何らかの問題が解決した・便利・おいしい・楽しい」などの、顧客が得る具体的な利益、利便性、快楽を指します。一方、独自性とは、そのプロダクトならではの唯一無二の特徴で、非代替性ともいえます。経営学者のマイケル・ポーター氏は「戦略の本質は、独自の道を生み出すことにあります」(「ハーバードビジネスレビュー」インタビュー・2011年より)と語っていますが、独自性がなければ、競合や代替品に埋もれてしまいます。

便益と独自性のマトリクス「価値の四象限」

シリーズ「WHO WHAT HOWと価値の理解」に既出ですが、便益と独自性のマトリクスである「価値の四象限」を改めて示します。企業がプロダクトを提示したとき、顧客がその中に便益と独自性の両方を見いだして初めて、価値が生まれます。

それぞれの有無は、図のように四象限で表すことができます。独自性が弱くとも便益が強固なら、一定のシェアを獲得できますが、競合品と比較されコモディティ化し、価格競争が避けられません(右下の象限)。一方で成分や製造方法、ネーミングやパッケージがユニークであるといった独自性はあっても、便益がない場合、単なるギミックであり、一過性の売上に留まり顧客は離反します(左上の象限)。いずれもないものは、開発に時間やコストをかけた上で誰にも何の価値ももたらさない、資源破壊といえます(左下の象限)。

当然、目指すべきは顧客にとって便益と独自性がともに強い、すなわち強い「価値」が成立する右上の象限です。この場合、売るための手段手法(HOW)への投資負担は少ないです。高い「価値」を認めた顧客から、徐々に潜在的な多くの顧客へと認知が拡大していくからです。顧客になっていただきたい方々に対して、自社プロダクトが提供する便益と独自性を磨き上げ、その方々に正確に伝えて体感していただくことで、顧客との間に高い「価値」が生まれます。結果、コモディティ化による価格競争を避け、継続的な購入を実現することができるのです。

顧客が求める便益と独自性を理解する

顧客にとっての便益と独自性の組み合わせを提案し、顧客が価値を見いだせば、購入や利用につながります。そのため、自社のプロダクトがどのような便益と独自性を持っているのかを理解し、それを顧客に伝えることが重要です。同時に、顧客がどのような便益を求め、どのような独自性を評価するのかを理解することも欠かせません。双方が合致しなければ、入手したいという心理変化が起こらず、購入や利用などの意思決定に至らないからです。

顧客とプロダクトとの間に成り立つ関係をよく理解することで、収益の継続性や成長戦略を立てる上での方向性を見つけることが可能になります。また、その顧客に適切に便益と独自性を伝えることで、購入や利用が積み重なっていきます。そうして価値を最大化した結果として、売上や利益が向上するのです。

合算された売上や利益の数字だけを見ていても、誰が、なぜ購入しているのかはわかりません。従って、これらの数字から、事業成長への道筋を導くことはできません。事業成長を実現するには、「特定の顧客(WHO)が、そのプロダクトにどのような便益と独自性(WHAT)を感じ取っているか」をつかみ、再現を重ねることが重要です。

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《西口一希》

経営とマーケティングの理解