
1人を深掘りし、拡大するためのアイデアを探す
人間の購入行動には必ず何らかのきっかけやニーズがあり、「N1分析」ではインタビューによって顧客1人ひとりの趣味や嗜好、生活態度、価値観、持ち物、興味の対象などを知ると同時に、購入行動を左右している根本的な理由を探っていきます。
多くの場合、顧客自身もその理由を明確には意識しておらず、単に「その理由は何ですか?」と聞かれても答えられません。それは、非合理的な感情的、情緒的な理由かもしれません。
だからこそ、「プロダクトに便益を感じて購入した際の重要なきっかけ」、さらに「ロイヤル顧客化した重要なきっかけが何だったのか」などを、マーケターがさまざまな角度から聞き出し、深掘りして分析する必要があります。

このように、「N1分析」では、まず実在する具体的な顧客1人に焦点をあて、その人が必ず買ってくれる、あるいは必ず喜んでくれるものを考え抜きます。
その後、その1人と同じような趣味や嗜好、生活態度、価値観、興味などを持つ人はどんな人なのかを探り、拡大していくためのアイデアを見つけ、スケールしていくのです。
最初から大勢の人が必ず買ってくれる、必ず喜んでくれるものを考えるのではなく、誰か特定の1人が価値を見出すプロダクトを考え、その後、同じような人を見つけて拡大していくということです。
1人のニーズから開発されたソニー「ウォークマン」
考えてみれば、これまで私たちの生活を支えてきた有名なプロダクトは、はじめは「誰か特定の1人」を喜ばせるため、あるいは便利になってもらうためのニッチからスタートしています。
1980年代に大ヒットしたソニーの「ウォークマン」も、創業者の井深大氏が海外出張の際に小型のステレオ録音機を持ち歩くのは大変だから、小型の音楽再生機が欲しいというニーズを開発陣に訴えたことから開発がはじまっています。その井深氏のニーズがほかの人にもあてはまると感じた盛田昭夫氏が商品化に踏み切ったところ、発売直後から品切れが続出するほどの売れ行きになりました。
ほかにも、ホンダ創業者の本田宗一郎氏がバイクをつくったように、「誰か特定の1人」がそれをつくった本人であることもあります。
「自分が欲しいからつくった」「自分が必要だと思うからつくった」というエピソードは、製品開発の舞台裏を描いた記事などでもよく見られるように、すべての成功しているプロダクトは必ず1人のニッチからスタートしています。
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