5-1-21:復帰後のジョブズの改革(1997年~)

世界一のブランド解説 Apple 神話の検証
1997年、ジョブズはAppleの経営を立て直すために、製品ラインの整理やNewtonプロジェクトの打ち切り、Microsoftとの提携などを実施しました。これによりブランド価値を再構築し、Apple復活への基盤を築きました。
5-1-21:復帰後のジョブズの改革(1997年~)

1997年当時のAppleは経営危機に直面し、株価は低迷し、業績も悪化しており、ジョブズは暫定CEO(iCEO)としてAppleの経営を掌握し、すぐに大規模な改革を実行しました。

1. 製品ラインの大幅整理

1997年当時のAppleは、製品ラインが過剰に拡大し、ユーザーも混乱する状態にありました。Appleは、複数の異なるモデルのMacintoshを販売しており、消費者がどの製品を選ぶべきか分からない状態になっていました。さらに、Newton(PDA)やMacintosh Performa、Quadra、LCシリーズなど、多様な製品群が市場に投入されていましたが、統一感がなく、Appleのブランド力を損なっていました。ジョブズは、Appleの生き残りにはAppleというブランドとしてのシンプルさとフォーカスが必要だと考え、製品ラインの大幅な整理を決断しました。彼は、次のようなシンプルな戦略を打ち立てました。

コンシューマー向けデスクトップ:iMac

コンシューマー向けノートブック:iBook

プロ向けデスクトップ:Power Mac

プロ向けノートブック:PowerBook

この決断により、Appleの製品ラインは明確化され、ユーザーは自分に合った製品を選びやすくなりました。このシンプルな製品戦略は、後のiPhoneやiPadのラインナップにも引き継がれる重要な考え方となりました。

2. Newtonプロジェクトの打ち切り

ジョブズが復帰した当時、Appleは、まだNewton MessagePadというPDA(Personal Digital Assistant)を販売していましたが、存続させる価値がないと判断し、Appleがモバイル市場に進出するのはまだ時期尚早であると考えました。彼は、Newtonの開発を即座に打ち切ることで、Appleのリソースをより重要な事業に集中させる決断を下しました。この決断は、後にiPhoneの開発につながる伏線となっています。

3. Microsoftとの提携と1.5億ドルの投資受け入れ

AppleとMicrosoftは、1980年代から激しく競争し、特にGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を巡る訴訟問題を抱えていました。しかし、1990年代に入ると、MicrosoftはWindows 95の成功によりPC市場を完全に支配し、Appleは苦境に立たされていました。ジョブズとマイクロソフトのビルゲイツも違いに非難することが続いていました。しかし、ジョブズ復帰直後の1997年のMacworld Expoで、ジョブズはMicrosoftがAppleに1.5億ドルを投資し、Mac版のMicrosoft Officeの開発を継続することを発表しました。また、AppleはMicrosoftとの特許クロスライセンス契約を結び、Appleの訴訟を取り下げることで、Microsoftとの法的な争いを終結させました。この決断は、Appleの存続にとって非常に重要でした。当時のAppleは、財務的に危機的状況にあり、Microsoftからの投資はAppleの信頼回復につながるものでした。また、Macユーザーにとって、Microsoft Officeの継続提供は、Appleの競争力を維持する上で不可欠でした。

4. Appleのブランド価値の再構築

ジョブズは、Appleのブランドイメージを刷新し、消費者にAppleの理念を再認識させることが必要だと考えました。1997年、彼は広告代理店TBWA\Chiat\Dayと協力し、「Think Different」キャンペーンを開始しました。この広告キャンペーンでは、アルバート・アインシュタイン、マハトマ・ガンジー、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアなど、世界を変えた偉人たちをフィーチャーし、「世界を変えるのは常識にとらわれない人々だ」というメッセージを発信しました。このキャンペーンは、様々な広告賞をとり、社内外にApple復活への期待を高め、後に、Appleが単なるコンピューターメーカーではなく、創造性とイノベーションを象徴するブランドであることを強調し、Appleのブランド価値を大幅に向上させたと評価されています。しかし、1997年のキャンペーン開始から3年以上Appleのビジネスは苦戦を続けており、商品提案が弱い中での、当時のビジネスへの直接の貢献はほぼないと言えます。

5. 小売戦略の改革とオンラインストアの立ち上げ

1997年当時、Apple製品は主に家電量販店で販売されていましたが、販売員がAppleの製品の魅力を十分に伝えることができず、消費者はWindows PCと同列に扱われることが多くありました。ジョブズは、Appleが消費者に直接製品を届ける方法を改善する必要があると考え、ジョブズはAppleの公式オンラインストアを立ち上げ、消費者がAppleから直接製品を購入できるようにする戦略を採用しました。この戦略は成功し、Appleは自社ブランドのコントロールを強化すると同時に、販売マージンの向上にもつながりました。

スティーブ・ジョブズが1997年にAppleに復帰した際、彼はただちに抜本的な経営改革を実行し、Appleを立て直すための重要な決断を下しました。これらの改革は、後に、Appleが世界をリードする企業へと成長するための基盤と期待を作りましたが、事実としては、ビジネス自体は苦戦が続き、ジョブズ復帰後6年経った2003年度の売上は1997年度を下回った状態でした。ジョブズが行った改革が、現代の私たちが知るAppleのプロダクトやサービスとなり、世界を席巻するまで非常に長い時間がかかったのです。しかし、これらの決断を下していなければ、Appleは存続すら危うかったかもしれません。彼の迅速で的確な改革が、最終的にiMac、iPod、iPhoneへと続くAppleの復活を支えたのです。

年度

売上 - 億ドル

対前年伸長率

2003

6.207

108%

2002

5.742

107%

2001

5.363

67%

2000

7.983

130%

1999

6.134

103%

1998

5.941

84%

1997

7.081

72%

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《西口一希》

Apple 神話の検証